私たちの日々の食卓に欠かせないお米。その米作りの現場でも、プラスチックは活躍し、難題にもなっている。
- 【そもそも解説】プラスチックとは 何からできてる?何が問題?
石川県内の水田の一角を、白っぽい膜が覆っているように見える。石川県立大の勝見尚也准教授(環境化学)が見せてくれた写真には、不思議な「物体」が写っていた。だが、拡大すると、「物体」は膜ではない。無数の小さな粒が、水面に浮いているのだという。
「プラスチック被覆肥料の殻ですよ。おもに稲作で使われているものです」。勝見さんはそう説明する。
プラスチック被覆肥料は、尿素などの肥料成分をポリエチレンやポリスチレンでコーティングしたもの。粒は直径3ミリ前後で、1980年代に本格的に使われ始め、現在は水田の6割ほどに広がっているとされる。
田んぼにまいて一定の時間がたつと、肥料の成分がプラスチックのコーティングから溶け出す。プラスチックの成分などを調整することで、溶け出すタイミングを早くしたり遅くしたりできる。溶け出す時期の違う肥料を混ぜて田植えの際に1回まいておけば、稲が育つのに合わせて適切な時期に必要な栄養を与えられる。
負担や汚染を減らしてくれる
「これまでは複数回にわけて肥料をまかないといけなかった。プラスチック被覆肥料を使うことで、肥料のむだが減るとともに、農作業の負担が格段に軽くなった」。JA全農・耕種資材部の小宮山鉄兵室長は、そう話す。
肥料を使う量を減らせるため、河川や海の汚染のほか、温室効果ガスである亜酸化窒素の排出も抑えられるという。
だが、いいことだけではない。
肥料が溶け出した後、プラス…